Reyernland über Alles!

第4ターン(大陸歴939年2月第3週)

第4ターン(大陸歴939年2月第3週)

大陸歴939年2月13日23:55。
ライエルンジーゲン特別市オーベン=リンデン区/駐ライエルン・サクソニア連合王国公使館内/駐在武官室。

「その情報、内容に間違いはないか?」
「はい、大佐。国防軍内の協力者からもたらされた機密情報で、出処は確かです」
「情報提供者の身分や立場に間違いが無いからと云って、正確な情報とは限らんぞ。協力者自身の主観や思い込みが混じっていないか?精査を怠るな」

旧神聖ライエルン帝国時代の大貴族の邸宅を買い取り、数次に渡って改修を施した、サクソニア連合王国公使館。
改修工事の結果、建物からは、往時を偲ばせる優雅な装飾や調度品の幾つかは、(連合王国の在外公館としての最低限の威儀を保つためのものを除いて)取り除かれ、代わりに、外部からの侵入や盗聴・盗撮行為を防ぐための無数の仕掛けが張り巡らされた、要塞のような建造物へと変貌を遂げています。

「先週、総統臨席の下で実施された、図上演習の結果はどうだったのだ?」
「はい。状況設定を変えて、何度か実施されたシミュレーションの結果、概ね87%の確率でライエルン軍は初期の戦略目標を達成する、との結果が出た模様です」
「共和国本土の北半分が開戦後3週間以内に蹂躙される……という訳か」
「はい。幾つかの部隊は国境要塞や各地の都市に籠って抵抗を続けるでしょうが、共和国第1軍集団の主力部隊は軒並み壊滅状態に陥ります。共和国側が残存兵力を再組織化し、新たな防衛ラインとして機能する段階まで立て直す事は事実上不可能でしょう」

ふむ、と低い声を漏らした駐在武官……ライエルンに於けるサクソニアの情報活動を統括する大物スパイは、しばしの間、目を閉じて思考に耽りました。彼の所属する特別情報部(MIS)は、連合王国首相チャールズ・コリン・ラウンデルに直属する情報機関であり、連合王国陸海空軍の軍組織を通じた情報収集活動のほか、スパイによる各種工作活動、通信傍受、暗号解読等も管轄する、強大な組織です。各国に駐在するサクソニアの在外公館にはMISの支局が存在し、外交官の肩書で多くのスパイ達が合法・非合法を問わず様々な諜報活動を展開しています。

「共和国第2軍集団は、南部の守りを放棄して、首都防衛に駆け付けざるを得なくなるな」
「第1軍集団が潰滅する以上、残りの兵力を掻き集めた所で、結果は知れています。アストリアスの陥落は不可避かと」
「我々の親愛なる同盟国は、”アンドレライン”に国力を傾け過ぎたのだよ。要塞線の建設に投入した膨大な人的物的資源を軍の拡充と近代化に振り向けていれば、ライエルンとの軍事格差がここまで拡大する事もなかっただろうに」
「二度のヴェーヴェルスブルク戦役に於ける敗戦が余程堪えたのでしょう。共和国政府も国民も、ライエルンに対する積極攻勢戦略に対する自信を完全に失ってしまいました」

そう、状況を分析してみせた部下の言葉に、長年にわたり、諜報活動の世界に身を置いてきた男は静かにかぶりを振りました。

「理由はそれだけではないぞ。ゴール人達は……国民も、政治家も、軍人でさえもが、ライエルンの巧妙な情報操作に踊らされて要塞万能論の虜となってしまったのだ。『”アンドレライン”さえあれば、ライエルン軍が侵攻してきても恐るるに足らない。必ず撃退できる』と、今この瞬間も信じ切っているのだよ……」
「何年もの間、国防予算の大半が”張り子の虎”同然の国境要塞群に浪費され続けているという事実に盲目になりながら、ですか?」
「その通りだ。加えて、ライエルン人は、今度は、その”アンドレライン”が無用の長物だったという真実を白日の下に晒す事で、ゴール人共の戦意を完全に挫こうとしている。敵ながら誠に天晴、見事な諜報工作と云わねばなるまいな……」


●今回、結論を出す必要のある議題(第4ターン)
親衛隊装甲軍の作戦行動方針。

ジーベルト参謀総長より、『親衛隊装甲軍の作戦行動方針について意見のある者は早急に提出するように』という指示が発出されました。
親衛隊装甲軍は、プランA・プランB共に、西方総軍直轄部隊として北部戦域で作戦に参加する事になっていますが、今回の定例全体会議に於いて提示されるプランAの改訂案では、A軍集団の一部と協力してメディス付近で”アンドレライン”を突破後、クリスベルンを経てノールに進撃する事になっているのに対し、プランBでは、A軍集団主力と共にアイフェルに進出した後、西に向かうA軍集団と別れてメディスに向かい、ヴァノアール方面の連合軍の牽制にあたる事になっています。
加えて、参謀達の間には(以前に比べれば、少し下火となってきているものの)依然として親衛隊装甲軍を北部戦域に投入する事への不満も燻り続けており、合意形成にはかなりの困難が予想されます。
参謀総長は、前回と同様、意見が纏まらない場合は、職権で決定を下す事も辞さない方針のようです。

●懸案事項の一覧(第4ターン)
(1)全体会議の前に、NPCに面会し、質問したり、交渉を持ち掛けたりする事が出来ます。
対象のNPCは、クロースナー上級少将、フリンゲル少将、ヴェーゼラー少将、グロースファウストSD上級少将の4人です。
なお、4人は多忙であり、複数人に面会を求めた場合、希望通りに面会出来ない可能性があります(いずれか1人に面会を求める場合は必ず面会出来ます)。

(2)ケラーマン元帥の後任のA軍集団司令官に門閥貴族派のエヴァルト上級大将が任命された事で、これまでラインハルト政権に距離を置いていた門閥貴族派の幾つかの家門が総統支持に転じました。その影響で、国防軍への志願者数の増加が見込まれるようになり、国内総予備から西方総軍に対して追加の増援が送られる事が決定しました。具体的には、西方総軍所属の二線級歩兵師団を2個、一線級の歩兵師団に改編するか?あるいは、二線級歩兵師団3個の増派が可能となります。
この懸案事項の解決にあたる場合、2個師団の改編又は3個師団の増派のどちらが望ましいと考えるのか?及び、西方総軍のどの歩兵師団を一線級化するのか?あるいは、3個師団をどの軍・軍団に配備するのか?を考え、プレイングに記述して下さい。

(3)ケラーマン元帥の後任のA軍集団司令官に門閥貴族派のエヴァルト上級大将が任命された事で、A軍集団司令部の幕僚達やA軍集団所属の各軍・軍団司令官達の間に不安が広がっています。
元帥は国防軍随一の総統派であり、部下の中にも熱心な総統派が大勢いますが、退任する元帥の後任として門閥貴族派の将軍が任命された事に対し、彼らの多くは戸惑いを覚え、一部の者は強く反発している状況です。
この懸案事項の解決にあたる場合、元帥の部下達の不安や不満をどのようにして取り除くのか?具体的にプレイングに記述して下さい。

(4)総統府より、前回に引き続き、ラインハルト総統の『”金の場合”に於いては、親衛隊装甲軍が重要な役割を果たす事を期待している』という内々の意向が伝達されています。
今回も正式な総統命令ではなく、あくまで個人的な要望というレベルに留まってはいますが、どういった風の吹き回しか?要求のトーンは、これまでに比べてかなり弱いものとなっています。

●マスターより

PBWアライアンス【Reyernland über Alles! シナリオ#1”金の場合”】へようこそ!

本ゲームは、異世界<レーベンスボルン>に存在する軍事国家ライエルン連邦とその西隣に位置するゴール共和国との戦争を題材とする仮想戦記風PBWです。
皆さんには、ライエルン連邦国防軍最高司令部に所属する陸軍参謀本部の参謀将校となり、数か月後に実施される予定の共和国侵攻作戦"金の場合"の作戦計画の立案にあたって頂きます。

ゲームの開催期間は約1年間、ターン数は5回です(なお、ゲーム内では1ターンは約1週間に相当します)。
ゲーム期間終了後、制作された全リプライを元に最終的な判定結果を導き出した上で、断章として執筆・公開を予定しています。

本ゲームへの参加にあたっての注意点です。
皆さんの立ち位置は、陸軍参謀本部の作戦課に所属する佐官クラスの参謀将校であり、前線司令部で部隊を直接指揮したり、自ら最前線に立って敵と戦ったりする立場ではありません。
従って、リプライの中で、戦闘や戦場の場面が描かれる事は基本的には無いものとお考え下さい(そもそも、このゲームの対象期間は、最後に制作する予定の断章を除き、ライエルンとゴールとの戦争が始まる数か月前の時期となっています)。

皆さんに行って頂きたいのは、

(1)公開済みのリプライやゲームサイトに掲載されている情報(各ターンの初期情報、戦略マップ、戦力表、各種図表類、ルール、世界設定等)を活用して、オリジナルの作戦案を立案する。
(2)ゲームサイトに掲載されている、NPCが立案した二つの作戦案のどちらかを支持し、正式な作戦計画として採用されるように努力する。
(3)ゲームサイトに掲載されている各ターンの初期情報や各ターンのシナリオ・オープニングに掲載されている懸案事項に関して、意見を述べ、解決に向けて努力する。

のいすれか、です。
ただし、(3)だけを選択する事は出来ません((3)を選択したい方は、必ず(1)又は(2)と一緒に行って下さい)。
また、(3)については、懸案事項を解決出来なかったとしても、ただちにゲーム上の不利益が発生する訳ではありません。
ただし、懸案事項の解決に貢献したと認められた方は、上官や関係者から好感を獲得出来るだけでなく、状況によっては、本国からの増援部隊の来援等、ゲーム上の利益となる事象が発生する可能性もありますので、挑戦してみる価値は十分にあるでしょう。

●前回のプレイングによってもたらされた状況の変化(全体)

・プランAの作戦行動方針が大幅に変更されました。詳細については、ゲームサイトをご覧下さい。なお、今後、親衛隊装甲軍を南部戦域で運用する事を主張する場合は、プランA又はプランBの修正意見ではなく、オリジナルの作戦案を提示したものと看做されます。
・B軍集団の作戦行動方針が決定されました。詳細については、ゲームサイトをご覧下さい。

●前回のプレイングによってもたらされた状況の変化(個別)

・パウラ・ヒンデンブルク歩兵少佐
好感度上昇:クロースナー上級少将
信頼度低下:A軍集団司令部

・ヴィルヘルミナ・グレーナー砲兵上級少佐
好感度上昇:フリンゲル少将、ゲッペラー宣伝相
信頼度上昇:親衛隊作戦本部

・ヘルミーナ・モルトケ装甲兵中佐
好感度上昇:クロースナー上級少将
信頼度上昇:A軍集団司令部

・エリーシャ・ファルケンハイン歩兵上級中佐
好感度上昇:フリンゲル少将
信頼度上昇:B軍集団司令部

・ヴィリー・フランツ参謀大佐
好感度上昇:クロースナー上級少将
信頼度上昇:B軍集団司令部
信頼度低下:A軍集団司令部

・ヘルムート・ロートシュタット歩兵上級大佐
好感度上昇:クロースナー上級少将、フリンゲル少将
信頼度低下:A軍集団司令部

※ 前回、懸案事項の(2)を選択し、ケラーマン元帥の後任にエヴァルト上級大将を推した参謀に対しては、A軍集団司令部の信頼度が低下した一方、フェードア上級大将を推した参謀に対しては、A軍集団司令部の信頼度が上昇した、と判定しています。

●プレイング作成にあたってのヒント

・(第3回リプライの中で、ヴィリー・フランツ参謀大佐が看破した通り)ラインハルト総統が望んでいるのは、”忖度”です。
これは、総統は、自分が議論を主導して”金の場合”の戦略方針を決定した、と思われるのを慎重に避けようとしている事を意味しています。一体、何のために、そんな回りくどい手法を取っているのか?リプライやオープニングの記述とゲームサイトに掲載されている情報を突き合わせつつ、想像力を働かせてみて下さい。

・ライエルン海軍は、第一次ヴェーヴェルスブルク戦役に於いて、サクソニア・ゴール海軍に大敗北を喫し、主力艦のほぼ全てと熟練将兵の大半を喪失しました。同時に、海外植民地も全て奪われてしまったため、その後20年近い歳月、大規模な水上艦隊は再建できず、また積極的に再建する必要性も存在しない状況が続いてきました。
ラインハルト政権の成立後、久方ぶりに艦隊の増強が再開されたものの、未だ計画は道半ばであり、(史実のドイツ海軍と同様)ライエルン海軍の戦力は連合軍側に比べて圧倒的に劣る状況が続いています。
ただし、ライエルン海軍は、史実のドイツ海軍のようにヴェルサイユ条約による厳しい制約を課されていた訳ではなく、あくまで国内事情から軍備を拡充して来なかっただけであるという点を考慮し、史実の第二次世界大戦開戦時のドイツ海軍に比べて、若干ではありますが、艦隊戦力は充実している設定となっています。

・今回のオープニングにも書かれている通り、”金の場合”は、ライエルン軍の勝利に終わる可能性が高くなっています。
ただし、100パーセント確実な勝利が約束されているという訳ではありません。また、たとえライエルン軍の勝利に終わるとしても、その『勝ち方』がどのようなものになるか?については、まったく確定していません。
史実の”黄の場合”のような鮮やかな勝ち方(イギリス軍は取り逃してしまいましたが……)となるか?それとも、勝つには勝ったものの、損害も無視できない水準に達し、手放しでは喜べないような結果に終わるか?はたまた、史実のドイツ軍でさえも成し得なかった、完全勝利を手にする事が出来るのか?は、参加者の皆さんのプレイングにかかっています。